神役の不安払しょく大切/神と森を考える会
宮国の祭祀継続で討論会
「宮国の神・人・自然」をテーマにした第22回講演とシンポジウム(主催・宮古島の神と森を考える会、宮国自治会)が22日、宮国公民館で開かれた。現役の神役や、カンカカリャ、神行事などを研究している大学の教授らが参加。講演や討論会などを通して、神役の女性たちの不安や恐れを取り除き、安らかに神事が行える環境づくりが祭祀の継続につながることを確認した。
上野宮国自治会には、三役と呼ばれる神役(ユーザス、ミズヌヌス、ツカサ)がおり、病気から家畜を守る「ムルン(虫送り)」や、子孫繁栄を祈願する「シツマス」など、ほぼ毎月のようにある地域の神事に参加している。
神役が一時途絶えたこともあったが、それまでの5年の任期を3年、1年にして、精神的負担を軽減させ継続してきたという。
「宮国の祭祀の現状と課題」と題したパネル討論では、パネラーがそれぞれの立場から経験に基づいた意見や提言を行った。
宮国のツカサ役だった松岡則子さんは「ツカサを務めたことで、神に感謝することを勉強した。何かあるたびに線香を立てて、『ありがとう』という気持ちを伝えている」と語った。
御嶽の中にこもって祈りを捧げることについて、カンカカリャの根間忠彦さんは「1年間、地域の行事を遂行することは素晴らしいこと。皆さんがいるから地域の発展がある。こもるというのは、舞い降りてきた神聖な神と向き合い、地元の発展を願う、非常に貴重な世界と思っている」と語った。
実際に「クムイニガイ」をしたという現役ユーザスの新里蔦枝さんは「2、3人で泊まったが全然怖くないし、心が落ち着いていた」と話した。
フロアからも活発な意見があった。宮国の元ツカサだったという女性は「神も知らずにツカサにされてからは、何をして良いのか分からない日々を過ごしていた」と当時を振り返った。
下地川満で、神役ユーザスをしているという女性は「一番気に掛かるのは、私たちのように神に直接交流できない人がどうやって神と交信をしたら良いのか。自分のやっていることは神に通じているのか。何かが足りないのではないか。不安が入り交じる中で神事に携わっている」と語った。
神と森を考える会事務局長の佐渡山安公さんは「ツカサが安らいだ気持ちでニガイを行える環境作りが、祭祀を継続することにつながる」と指摘。「『神役に選ばれたらどうしよう』いう不安を取り除くことが大切だ」と述べ、非常に安らいだ気持ちで祈りを捧げる本来の姿の復活を呼び掛けた。
関西学院大学の島村恭則教授は、祈りの世界を「神と一体による安らぎと充実感」とこれまでの考え方を紹介した上で、「神事自体が遺産だが、それを行っている人間自体に価値がある」と述べた。