行政主導が見え隠れ/学校統廃合
保護者に戸惑いと不安
市教育委員会は24日の定例会で、これまで下限のなかった幼稚園の学級編成基準を5人以上に変更する規則改正案を全会一致で承認した。これに照らし合わせれば、すでに休園となっている宮島のほか、池間、福嶺が対象となり、来年4月から休園になる。
教委は、年々園児数が減少傾向にあることを示し、子供にとって望ましい環境は「一定の集団の中で子供同士が相互に影響し合い、一人一人の子供が発達に沿った必要な経験が得られること」を挙げた。
保護者には事前説明もなく、新聞やテレビでの報道を通してしか知らされなかった。保護者の一人は「学校の統廃合につながる問題であり、教育委員会の対応は丁寧さに欠けるという印象がある」と話した。
周囲に考える機会を与えず、地域性や住民の主体性を無視したような行政主導による学校の統廃合が見え隠れする。
■不安募る保護者
市教育委員会がいう「学校規模適性化」計画は、城辺にある福嶺、城辺、西城、砂川の4中学校を2021年度までに1校に統合することなどが示されている。
今回の規則改正案は、学校統廃合の計画をさらに推進するものとして捉える保護者もいる。
小学生の保護者は、「幼稚園が休園になれば、続く小学校へ入学する児童がいなくなる。小学校の統廃合を早期に進めるという措置としか思えない」と指摘する。
福嶺小の保護者は、同校6年生と中学生の保護者全員が砂川中へ転校を希望する「嘆願書」を教育委員会に提出したことを挙げ「来年からは中学校も休校の可能性が高い。私たちの知らないところで、話が進んでいる気がする」と不安を募らせた。
■地域からの非難覚悟
福嶺小6年生と中学生の保護者から提出された転校の「嘆願書」は、学校関係者を驚かせた。転校届けが提出されれば、来年4月からは休校となるだけに、地域や卒業生にも波紋が広がった。
教育委員会はこれまで、地域からの根強い反対の声を押し切って来間中を下地中に、宮原小を鏡原小にそれぞれ統合した。
しかし、福嶺の場合は、保護者自らが子供たちを転校させることで、市教委の統廃合計画を事実上、後押しする形となった。
「地域からそしりを受けることは免れないと思う」。砂川中への転校を希望する福嶺小、中の保護者たちは宮國博教育長にこう伝えた。
福嶺中の児童数は、現在11人。しかし、来春からは7人に減少する。「現状を見ると、少人数の環境を変えるには転校しかない」との結論に至ったと見られる。
「本当は福嶺中を卒業させたい。これは苦渋の決断」。涙を流す保護者もいた。
■「自発的行動」、教委の誘導否定
嘆願書を提出した保護者たちは、福嶺小の保護者などを対象に、「集団転校」に至った経緯などを説明した。
この日の参加者によると、地域説明会を開かず、保護者自らで決めたことや、児童生徒全員が転校することに対し、「教育委員会が転校を促したのではないか」などとした声が上がったという。
保護者たちは「自発的な行動だった」、宮國博教育長は本紙の取材に「教育委員会がそんな(転校を促す)ことをするわけがない」と「誘導」を双方ともに否定した。
■学校統廃合、避けて通れず
今やどの地域でも学校統廃合は避けて通れない問題となっている。
教育委員会は学校を統合して「適正規模」にする必要性を上げているが「地域を活性化させ、子育て支援を強化し、児童生徒数を増やしていくのも行政の役目だ」という声もある。
「『少子化だから仕方ない』では、あらゆる解決の可能性を放棄するようなものだ」という意見もある。
この島では、毎年「卒業記念」「還暦記念」と称して同窓会を開き、母校の後輩たちに寄付金を贈る光景が風物詩となっている。
母校を思う気持ちや、卒業生の結束は強いものがある。島の未来を担う子供たちのより良い学校環境とは何なのか。地域と行政が議論を重ね、知恵を出し合い解決していくことが求められている。