マインドセットが大切/為末大さん基調講演
子供たちに挑戦促す/限界は「思い込み」
世界陸上銅メダリストの為末大さんが21日午後、マティダ市民劇場で行われた市の教育を語る市民大会の中で基調講演を行った。多くの人が「体ではなく、思い込みで自分の限界を決めている」と指摘し、「私にもできるんだ。絶対に勝てるんだ」という思考に変えていくマインドセットの大切さを語った。子供たちに対しては「挑戦を続ける人生は楽しい」と語った。
講演の冒頭、為末さんは世界で初めて1マイル走で4分を切ったイギリスの元陸上選手ロジャー・バニスターさんを紹介した。
「当時は4分を切ることは絶対に不可能だと考えられていた。医者も体が壊れると言っていた。その4分をロジャーさんが切って見せた。すると、その後の1年間に23人もの選手が4分の壁を破った」と話し、限界は人の頭と心が決めていると主張した。
その上で「人には誰かができれば自分もできると思い込む心理がある。だからできるんだと思い込むことが大切だ」と話してマインドセットを呼び掛けた。
初めてのオリンピックで転倒した自身の映像も上映した。この失敗を通して海外レースに身を投じることになった過去を紹介。これが自身のマインドセットの機会になったと語った。
海外でのレースを経験したことで「世界が当たり前になった。それまでは、どこかで勝てないという心理があったが、経験を通して勝てるという気分に移行していった。世界で戦えると信じられた瞬間だった。これが自分のマインドセットになった」と話し、思考の切り替えに経験が役立つ自身の実践例を挙げた。
最後に、「挑戦」について語った。「失敗する可能性があるものが挑戦。ある程度失敗することは受け入れること」と話し、再び初の五輪で転倒したことを紹介した。「あのレースは失敗だったが、あのときの失敗があったから今の自分がある。でも、日々を一生懸命生きないと失敗は失敗のままに終わる。挑戦する人生は楽しい」と話した。
講演後に行われたトークセッションでは子供たちが為末さんを質問攻めに。為末さんは質問の一つ一つに丁寧に答えていた。
為末さんは、2001年の世界陸上400㍍ハードルで、トラック競技では日本人初となる銅メダルを獲得。05年の世界陸上でも銅メダリストに輝いた。