学校休校 揺れる思い/福嶺中
事実上最後の卒業式/「永久に不滅」願う声
「われわれの誇りのふるさと福嶺が、永久に不滅であることを切に願う」。福嶺中学校で13日、事実上最後の卒業式が行われた。新年度休校を前に、生徒、学校職員、父母、地域住民の感情は静かに揺れ動いた。卒業を祝う半面、時代の流れに抗えない歯がゆさと、休校という現実を前にこみ上げてくる寂しさ。一人一人が複雑な思いを胸に、卒業生7人の背中を見送った。
今年の卒業式も、いつものように地域の人が見守る中で行われた。「宝物」である子供たちの門出を祝いたい。小さな地域特有の光景が、そこにはあった。
饒平名和枝校長は、そんな地域への思いを式辞に込めた。「本校教育に寄せられた理解と温かい支援に感謝します」と述べ、最後はこう結んだ。「多くの卒業生の皆さんが築き上げた歴史と伝統は、皆さんの誇りとして輝き続ける」
教育委員会を代表して出席した宮國博教育長は「万感の思いを込めて参加させていただいた」という言葉を振り絞り、休校と向き合わざるを得ない地域住民の感情をおもんばかった。
PTAの松川勝光会長はあふれる思いをありのままに語った。「繰り返す波のごとく永遠に。降り注ぐ太陽の光のように永遠に。われわれの誇りの古里福嶺が永久に不滅であることを節に願う」-。母校への気持ちをこの言葉に託した。
全体合唱。歌は「旅立ちの日に」。全校生徒11人が共に歌った。少人数を感じさせない声量と安定感あるハーモニーが会場いっぱいに広がった。父母ら地域住民は、この学びやで聴く最後の合唱を胸に刻んだ。
校門を出た卒業生の心境は複雑だった。中田右納さんは「自分なりにできることはないだろうか」と考えたという。休校のことは卒業生同士で話すことはほとんどない。「どうしても暗くなっちゃうから」というのが理由だ。「深刻な問題だけど、私一人でも考えていきたい」と話した。
運天凱飛君は「休校は寂しいけど、仕方ないのかなあとも思う。在校生のことを考えると…」と揺れ動く気持ちを表情に浮かべた。
式後、松川会長は「校歌を聞くとやっぱり…」と言葉を詰まらせた。「再び開校してほしいと願う気持ちはある」とつぶやきながら母校の校舎を見上げた。
福嶺中は1949年、当時の城東中学から分離独立して開校。卒業生は計3195人。休校は初めて。