助け必要、力貸して/熊本地震
被災学生が呼び掛け/「熊本の力になりたい」
熊本地震で被災した宮古島市出身の学生が宮古島に避難している。余震がない宮古島の日常に安堵(あんど)しながらも、友人やその家族を残してきたという心の葛藤が消えない。「居ても立ってもいられない」-。学生たちは20日から街頭での募金活動を始めた。近藤優美さん(21)は「熊本の力になりたい。そのための助けが必要です。皆さんの力を貸してほしい」と訴える。
熊本県上益城郡の平成音楽大学に通う近藤さんら女子学生5人が20日、宮古毎日新聞社を訪れ、大地震の恐怖をそれぞれ語った。
14日夜、近藤さんは食事中に強い揺れを感じた。震度6強。怖くてその日は友人宅に逃れた。「生きた心地がしなかった」。
翌日、大学は変わり果てていた。窓はひしゃげ、ガラスは飛び散り、壁には無数の亀裂が入った。現実をのみ込めなかったという。
熊本保健科学大学に通う仲宗根有沙さん(21)は車中泊を経験した。「全然眠れないんです」と振り返る。日は友人と自宅で寝ることにしたが、本震で恐怖のどん底に突き落とされた。
「ガタガタガタッ」。激しい横揺れに「初めて死ぬことを覚悟した」と表情を曇らせる。地震直後、自宅を飛び出した。もう行く当てはない。友人共々、道路の脇で毛布にくるまって朝が来るのを待った。寒さと余震に震え続けた。
熊本県玉名市で被災した池村凪沙さん(19)も本震の恐怖に震えた。「ドンという音と一緒に揺れが長く続いた。そのうち晴れているのに自宅前にある林の向こう側で雷みたいなすごい音が鳴った」と話す。翌朝林の向こうをのぞいてみると家屋がぐちゃぐちゃに壊れていた。自然の脅威にただぼうぜんとなった。
着の身着のまま古里に避難してきた5人だが、被災地の友人らを思うと「居ても立ってもいられない」と口をそろえる。
仲宗根さんと同じ熊本保健科学大学に通う久貝碧さん(20)は複雑な心境を明かし、「自分だけこんな安全なところに戻ってきても良いのだろうか」と自らを責める。同じ大学の砂川万里菜さん(19)は「経験して分かった」と話し、5年前の東日本大震災を人ごととしか捉えていなかった自分を悔いた。「被災者の思いも今なら分かる。だからこそ助け合いたい」と今までの自分を戒めながら被災地支援を誓った。
5人は「宮古島でできることをしよう」と市役所を訪ねて募金活動のいろはを学んだ。近藤さんは市民に向けて「熊本では今も余震が続いています。私たちの友人やその家族が大きな被害を受けています。助けを必要としています。皆さんの力を貸してください」と呼び掛けている。