保良の石灰華段丘を指定へ/国の天然記念物に
旧仲宗根氏庭園は登録記念物/文化審議会
【那覇支社】国の文化審議会(馬淵明子会長)は17日、東平安名崎に隣接する宮渡崎のティダガー(太陽泉)にある「宮古島保良の石灰華段丘(かだんきゅう)」を、新たに国の天然記念物として指定する答申を馳浩文部科学大臣に提出した。今年中には、正式に登録される見通し。宮古地区での天然記念物指定は、下地島の通り池(2006年)、八重干瀬(13年)に続いて3件目となる。また、平良東仲宗根にある「旧仲宗根氏庭園」については、国の登録記念物(名勝地関係)への指定を答申した。
答申を受け、宮古島市教育委員会の宮国博教育長は「2件とも、宮古島独特の自然環境、歴史と文化の中で形成されたもの。今後とも、関係各所と協力しながら保護と保存、活用を行っていきたい」とのコメントを発表した。
保良の石灰華段丘は、宮渡崎の崖の下部に、長さ約70㍍、幅約30㍍の範囲で分布。地下水が湧き出すティダガー(太陽泉)の水が海に流れ出る際、石灰を主成分とする沈殿物(石灰華)が微量に固まっていくことで、長い期間をかけて階段状に大小の池が形づくられている。元日本大学教授の小元久仁夫さんによると、約3300年前から形成され始めたと推定されるという。
石灰華段丘は、山口県の秋吉台洞窟内にある『百枚皿』の例など鍾乳洞内の例はあるが、野外に形成されることは非常に珍しいといい、保良の華段丘は学術上も貴重なものと判断された。
また、旧仲宗根氏庭園は、15世紀末から16世紀初めに宮古島の首長となった仲宗根豊見親玄雅の一族が昭和初期に作ったもの。宮古島に残る唯一の旧士族邸宅にある庭園だ。
住居から眺めて楽しむものとして設計された沖縄の伝統的庭園で、人工の池があるほか、琉球石灰岩で作られた石組みから水を流すことで滝を想像させる仕掛けも施されている。
このほか、山をイメージした「築山」と呼ばれる盛土など、庭全体として自然を具現化したものとなっている。保存状態を改善するなどの目的もあり、今回の指定に向けた動きになったという。
市の担当者は「庭園は宮古島の歴史的遺跡を整備するする『NEO歴史文化ロード整備事業』の対象になっている。今後も、調査を行うとともに観光にも活用していきたい」と話している。
保良部落会の下地博盛会長の話 保良が全国にPRされるのはうれしい。天然記念物として指定されれば、観光客も訪れる。観光振興と環境保全の両立を考えていかなければならない。地元の人たちは見慣れているせいか、あまり重要と思っていなかったようだ。今後は保全や活用に向けての機運が高まるだろう。