遺伝子解析研究を充実化/琉大大学院医学研究科
宮古の住民からデータ採取へ
琉球大学大学院医学研究科は、高血圧や肥満、糖尿病など、いわゆる生活習慣病と遺伝子との関係を解析するためのデータ採取を、11月にも宮古島市で実施する予定だ。特定健診の際、受診者の同意を得た上で、7CCの採血を余分に実施する。近年、血圧の上がりやすい人や肥満になりやすいタイプなどが遺伝子レベルで解明されていることから、さらに研究を進め最先端医療の充実を図る。同大の松下正之医学部長、同大大学院の先進ゲノム検査医学講座教授で医学博士の前田士郎氏らがこのほど、宮古地区医師会(会長・下地晃城辺中央クリニック院長)に、研究概要の説明とデータ採取への協力を求めた。
同大医学部および同附属病院は、2024年度末に宜野湾市西普天間住宅地区に移転する計画で、その中では、遺伝子検索・機能解析を行う先端研究や、その成果を提供する産業振興の構想などが示されている。
採取・解析されたデータ情報は、将来的には本人に還元する予定。医師会の下地会長によると、家族性・遺伝子性乳がんや卵巣がんは、特異的な性質を持つことが判明しており、糖尿病の原因も大部分が分かり始めているという。
「遺伝子研究は分からない部分が多いが、はっきり分かっている分野については、将来的には照会が可能」と話している。
前田氏によると、これまでのデータの解析結果から、「宮古地域の住民は沖縄本島や八重山諸島の住民と異なる背景を持っており、高い均一性が保たれている」と指摘。「特定健診者の男性の60%以上にメタボリック症候群を合併し、高血糖、尿タンパク陽性例の割合も高く、特有の遺伝要因の関与が示唆されている」と述べ、宮古における生活習慣病遺伝子の研究課題の意義を強調した。
遺伝解析についてのデータ採取は、宮古島市のほか、那覇市や久米島でも実施。いずれは県全体に広げる考えだ。
前田氏は「まだまだ遺伝子情報は限定的な情報でしかないが、これから沖縄で得られる情報や世界中から集まってくる情報を統合すれば、近い将来、多くの疾患の原因を明らかにすることが可能になり、新しい予防や治療方法の開発に結びつけることができる」と話した。