懲役7年の実刑判決/児童虐待死事件で那覇地裁
【那覇支社】宮古島市内の自宅アパートで2015年7月、当時3歳の娘に暴行を加え死亡させたとして傷害致死罪に問われた元建設作業員の伊良部和士被告(22)=平良西里=に対する裁判員裁判の判決公判が1日、那覇地裁で開かれ、潮海二郎裁判長は「複数回にわたり相当強度の暴行を加えている点で危険性が相当に高く、頭部を床に強く打ち付けさせる事態を招いた」として懲役7年(求刑懲役8年)の実刑判決を言い渡した。弁護側は控訴しない方針。
弁護側は「被告は注意欠陥多動性障害(ADHD)を有しており、善悪を判断する能力や行動を制御する能力が著しく低下した状態で犯行に及んだものであり、心神耗弱状態にあった」と主張していた。
潮海裁判長は判決理由で、「就労を継続するなど通常の社会生活を送っており、社会に適応できなかった事情も認めれない。暴力の対象が自分よりも立場の弱いものに向けられており、普段から分別をつけた行動をしていた」と述べた。
さらに、「指示に従わなかったことを叱責する中で、しつけと称して暴力を加えており、動機は十分に説明することが可能。犯行直後には、妻に対し遊んでいて転び胸を打ったなどと虚偽の説明をするように依頼するなどした」と指摘した。
その上で、「犯行当時ADHDの傷害を抱えていたとしても、犯行に影響するものではなく、犯行前後の行動をみても、その判断能力や制御能力に問題があったような事情は認められない」と判断し、「犯行当時、被告は完全な責任能力を有していた」と認定した。
また、弁護側の「腸間膜損傷は被告の行為により生じたとは限らない」との主張には、「暴行を受ける前には特段変わった様子はない。医師の証言によると、同損傷は意識不明に陥る前に生じており、腹部を複数回指先で突いた行為以外には認めれない」と結論付けた。
判決によると、被告は2015年7月26日、宮古島市内の当時の自宅アパートで、女児の腹部を左手の指先で数回突き、さらに、左手で押す暴行を加え、女児を転倒させて頭部を床に打ち付けさせ、急性硬膜下血腫などの頭蓋内損傷の傷害を負わせ、同月27日に死亡させた。