新種記載に向け調査へ/シマジリクジラ
学術的価値高まる/発見者の安谷屋氏 市に化石寄贈
1973年に島尻地区で頭がい骨の化石発見された「シマジリクジラ(通称)」(ナガスクジラ科)が新種の可能性が高まってきた。新種記載に向け、この化石を発見した安谷屋昭さん(市総合博物館協議会委員)が7日、今後の調査研究をスムーズに行うために同博物館にこの化石を寄贈した。今後、国立科学博物館地学研究部生命進化史研究グループの甲能直樹研究主幹(筑波大学大学院教授)らによって、研究が進められ、年内にもその結果が論文として示される予定となっている。
同博物館で行われた贈呈式で、安谷屋さんは「この化石は新種の古生物の可能性を秘めており、さらなる研究分析が必要。その成果により天然記念物として学術的価値が高められていくことを期待してる」と述べた。
さらに、安谷屋さんは市が今後建設を予定している新しい博物館においても、より良い状況で保管、展示されることを呼び掛けた。
寄贈を受けた宮國博教育長は「新種の可能性があると言うことなので私たちも緊張している。学術的に大変価値のある物なので今後の研究に協力するとともに、新たに建設される博物館でもしっかり管理したい」と述べた。
今後、新種記載に向けた調査を行う甲能研究主幹は「この化石は新種の可能性が高い。そのためにはもう一歩踏み込んだ研究が必要。そのためにも化石は公的機関で管理する方が良い。約600万年前の生物の化石が新しい事実とその後の歴史を語ることになると思う。早い時期に結論が出せるようしかり調査したい」と決意を示した。
この化石は73年の8月に行われた沖縄第四期地質調査団による宮古島調査時に、沖縄地質学会会員として参加した安谷屋さんが、島尻集落北海岸崖下の波打ち際でスクラップ鉄塊状に見えるクジラの頭がい骨の一部を発見した。
化石は保存度が良く、学術的にも高い価値があるとして、宮古島で保存展示していくこととなる。
クリーニングされた化石は、当時の平良市総合文化祭で展示紹介されたほか、現在の市総合博物館の開館後は寄託展示されて現在に至る。
77年には旧平良市の天然記念物に指定されたが、自然風化が進んだことで、再度強化クリーニング作業が大阪自然史博物館において行われた。
このクリーニングの際に、複数の専門家の目に止まり、再調査分析による登録記載の提言がなされた。
その後も研究が進められたが、これまで知られているナガスクジラのどれとも異なっていることがわかり、「未知種」と位置づけられて新種の可能性が高まったことから、それを裏付ける研究分析が今後行われる。