弱さの意味を再考/頭木さんトークショー
苦悩人カフカの人生を紹介
「絶望読書」や「絶望名人カフカの人生論」の著者で、宮古島市在住の文学紹介者、頭木(かしらぎ)弘樹さんのトークショーが26日、ゲオ宮古店で行われた。いつも死にたいと思っていた作家カフカの人生を日記や手紙などをもとに紹介した頭木さんは「弱い人間であるということは欠点だが、弱くないと気づかないこともある」と指摘。「カフカの生き方は現代人に通じることもたくさんある」と語り、弱さの意味を再考することの大切さを訴えた。
トークショーは、頭木さんの新刊「カフカはなぜ自殺しなかったのか?」(春秋社発行)の出版を記念して行われ、女性を中心に幅広い年齢層のファンが集まった。
頭木さんはまず、「自殺した人に『なぜ自殺したんだろう?』と思うが、自殺しなかった人に『なぜ自殺しなかったのか?』とは考えない。でもそれがカフカ」と話し、「そういう視点からカフカの人生を追ってみようと思った」と発刊の動機を語った。
橋の上で通行税を取り立てている男性をびっくりさせようと窓から飛び降りることを考えたり、付き合っている女性から1カ月手紙が来ないことを理由に自殺しようとしたカフカの気持ちを紹介した。
カフカは、犬の散歩途中にモグラの鳴き声を聞いたことで、小さい存在の気持ちを知り、弱い立場から世界を見ようとした。
また、強い父親に反発。しかし対抗して強くなろうとはせず、逆に弱くなろうとした。
頭木さんはそんなカフカの気持ちを代弁し「山の頂上に登った人しか見えないものもあるが、途中でやめた人だけにしか見えないものもある」と語り、弱さがゆえに見える世界があることを強調した。
2回婚約し2回解消した恋人フェリーツェとの手紙のやり取りや、カフカの才能を見抜き引き出そうとしたブロートとの交友関係も話して、あまり知られていないカフカの人間関係をひもといた。
頭木さんは「生涯、苦悩していたカフカの人生は、現代を生きる人たちにもつながる部分がある」と話し、作品の一読を勧めた。