被災地へ 鎮魂の祈り/東日本大震災6年
「あの日を忘れない」/ピアノと歌声で復興支援
「あの日を決して忘れない」-。東北地方を中心に未曾有の被害をもたらした東日本大震災発生の日から11日で6年。今も12万人余が避難生活を送る中、全国17カ所でピアノと歌声に祈りを込めるイベントが開かれた。宮古島市の開催場所は伊良部のホテルてぃだの郷。合唱団などから30人が参加し、鎮魂と復興への祈りを歌声に込めた。
午後2時30分。佐和田の浜が一望できる会場でセレモニーは始まった。潮が引き、砂地があらわになった名所をじっと見つめる参加者。それぞれ6年前の「あの日」に思いをはせた。
冒頭、てぃだの郷の猪子立子さんが「東日本大震災では多くの方が亡くなっており、今も2500人以上の方が行方不明のまま」と震災の爪痕を語った。その上で「宮古島でも明和の大津波でたくさんの人が亡くなっている」と話し、防災意識の重要性を説いた。
地震が発生した時間になると黙とう。被災地方面に体を向け、目を閉じて鎮魂の祈りを捧げた。
この後、宮古フロイデ合唱団の皆さんと一般の市民が歌った。フラダンスサークルの「オルオル・カ・マナオ」のメンバーは、歌に合わせてフラを踊った。
曲は復興支援ソング「花は咲く」。長濱隆さんのピアノ演奏に合わせ、歌に万感の思いを込めた。
「叶えたい夢もあった 変わりたい自分もいた」「今はただ なつかしいあの人を思い出す」
歌詞をかみしめ、胸にこみ上げてくる感情をそのまま歌声に乗せた。
小川栄子さん(70)は毎年参加している。あの大震災のとき、医療関係で働く娘がボランティアで被災地に出向くと言った。小川さんはとっさに、「行ってはだめ」と言った。娘を思う気持ちの表れだった。
ただ、この言葉に娘は傷付いたという。助けが必要な人たちのために行動しようとする娘に対し、「私は失礼なことを言った。今も恥じている」と悔やむ。
震災の被害を知れば知るほど、自分の発言に苦しんだという。だから小川さんは歌う。目尻の涙を拭いながら「娘の頑張りには負けるけど、年1回しか歌えないけど、被災地への思いを届け続けたい」と話した。
震災から6年。参加者は風化を心配する。猪子さんは「イベントをもっと多くの市民に伝えて参加を呼び掛けたい」と話し、イベントの広がりに伴う復興支援活動の継続を誓った。